10Xのカルチャードリブン開発を支える選考プロセス『トライアル』の紹介

こんにちは。ソフトウェアエンジニアの村岡(@_tapih)です。

私が入社して約3ヶ月が経ちましたが、入社前後のギャップが一切なく、もう何年も働いているような不思議な感覚で日々働いています。 これは弊社が採用で行っているトライアルという仕組みがうまくワークしているからだと感じています。 この記事では弊社の選考プロセスで実施しているトライアルの概要と実際に私がトライアルで行ったことを紹介します。

なお、弊社はSWE/Product Manager/Designer/QA/SET/SREを絶賛募集中です(Dartを使ったことがなくてもOKです!)。この記事が弊社に興味がある方々の参考になれば幸いです。😄

※ 本記事で紹介するトライアルに関する内容は、取り組む課題に個人差があること、今後内容が大きく変わる可能性があることの2点にあらかじめご注意ください。

※ 2023年3月現在、ソフトウェアエンジニアに関してはトライアルによる選考を終了し、新たなプロセスを実施しています。詳しくはCTOによる投稿をご覧ください。

トライアルとは

トライアルとは、事前に「インパクトあるイシュー」を挙げてもらい、実際に働く機会を設けてそれに取り組んでもらうことで10X Valuesにフィットすることを相互確認する採用プロセスです。

候補者はNDAを結んだ上で弊社の社内情報に事前にアクセスし、あるテーマに対するイシューとそのイシューに対してどう取り組んでいくかを準備します。 その後、1日〜数日かけて事前に決めた課題に取り組み、最後は取り組んだ課題の成果を発表してもらいます。

候補者によってテーマに細かい違いはありますが、プロダクト開発に関わる職種で共通する点として「いかにStailerを10x成長させるか?」という視点を含んでいます。 イシューの選定の際には、短い時間でも「候補者の強みが最大限発揮できる」ようなものに取り組んでもらうことが重要で、決して「タスクの完了」を目的とはしないことで、 何かしらの10xから逆算した貢献ができるイメージを共有できることを目指します。

面接はどの会社も採用しているであろう選考プロセスの代表的な手段ですが、短時間の面接で自社のカルチャーへのフィットを見ることは非常に難しいのではないでしょうか。 一方で、「実際に働く」というプロセスはカルチャーフィットがリアルに感じられ、これを確認するための非常に明快な手段であると考えます。 また、候補者の側は、会社の内情を事前に実体験として知ることができるので、入社前後でのギャップを抑えることができます。 このように、選考を受ける側と提供する側の両者に対して、納得感のある結論を安定して出せることがトライアルのメリットです。

採用プロセスや評価グレードについてはCulture Deckに説明があるので、興味のある方はご一読ください。😄

speakerdeck.com

...といろいろ書きましたが、これだけではイメージが湧きづらいと思うので、後ほど具体例として私がトライアルで行ったことを紹介したいと思います。

トライアルがプロダクトに与える影響

10X Valuesに関しての個人的な解釈は以下の通りです。いずれも抽象的ではありますが、プロダクトを作り上げていく上で必要な要素が全てここに凝縮されていると考えています。

  • 10xから逆算する: プロダクトとの向き合い方
  • 自律する: 自分との向き合い方
  • 背中を合わせる: 他人との向き合い方

したがって、これが体現できること=10xするプロダクトを作ることに繋がり、採用の段階からこのカルチャーに対するフィットを入念に確認することがそのままダイレクトにプロダクトの質につながってくると考えています。

過去のトライアルで取り組まれた内容

弊社が開発するStailerはスーパーマーケット、ドラッグストアなどの小売チェーンがECを立ち上げるためのプラットフォームです。 このプロダクトに対し、過去には以下のような内容でトライアルが実施されました。人によって期間はまちまちですが、そこそこ大きめの粒度で設計から実装までを行っていることが伺えると思います。

  • (SWE) 商品タイトルに含まれる商品詳細の自動抽出とタイトルの再生成の実装(1週間のトライアル)
  • (SWE)「ついで買い」機能のUI及びAPIの設計・実装とリピート購入の傾向分析とロジック提案
  • (Designer) 注文〜受け取りまでの体験設計とUI作成、ユーザビリティテストの実施(約3週間の間、実際のPJで稼働)
  • (Product Manager) 商品検索改善のための全体設計の提案
  • (Growth) パートナーから受領した商品データをStailerに取り込むフローの汎用化方針の設計・実装

私がトライアルで取り組んだこと

さて、トライアルに関するイメージをより明確にするため、ここから私のトライアルについてご紹介したいと思います。

私は「とあるネットスーパーを10x成長させるには?」というテーマに対してネットスーパー利用客がほしいと思った商品にうまくアクセスできていないペインの解消というタイトルで商品検索改善に取り組みました。

1. 採用エントリーからトライアルまでのタイムライン

エントリーからトライアルまで約1ヶ月半程度の時間がありました。 事前に何をやるのかを社員との面談を経て決定した上で、トライアル当日に実際に出社して成果を発表しました。 1回目の面接の前と事前準備にそれぞれ半日程度まとまった時間を使って稼働して、あとは平日夜の時間をちょこちょこ使って準備を進めました。 子育てで時間が確保できるか心配なところがありましたが、比較的ゆったり目のスケジュールで調整し、無理なく進めることができました。

2/17 HPからエントリー
2/22 トライアルについての面談(1回目)
2/24 NDA締結
3/8  トライアルについての面談(2回目)
3/9~ 事前準備
3/31 1dayトライアル
2. 課題設定に至るまで

どのようなペインがあるのかを把握するため、まず始めに一ユーザ目線でStailerが提供するネットスーパーを利用してみました。 そこで、多種多様な品目を扱うネットスーパーにおいて検索機能が非常に重要な機能であるにも関わらず、検索結果が「しっくりこない」と感じることが多いことに気づきました。 続いて、この「しっくりこない」感覚を深堀りするために社内のドキュメントを読み、在庫の問題・検索の問題・商品の見せ方といった点にその原因があると整理しました。

ペインに対する施策の整理
(ペインに対する施策の整理)

現在の事業の状況を踏まえると、中でも商品検索の改善にフォーカスするのがベストと考え、続けて検索改善の全体像の検討に取り掛かりました。 ここで考慮が必要だった点としては、タイトル・説明文・カテゴリ名といった各商品のデータが十分に整備されていない、という問題がありました。 実際にどのような検索ができているか・できていないかを試しながら、限られたデータをいかに有効活用するか、検索クエリのサジェストを用意するなど検索体験の全体設計でカバーできないか、といった観点から検討を進めました。 私はトライアルまで検索改善の経験がなく、ましてやElasticsearchを利用したこともなかったため、このプロセスは非常に苦労しました。

各情報の使い方の整理改善案の全体像
(改善案の全体像)

3. トライアル当日

私が示した検索改善のゴールイメージと現状のElasticsearchの設定を踏まえ、改善の一手段としての「Ngramを利用した単語のアナライズ」と、 改善の計測のための「Ranking Evaluation APIのデモ」の2点にトライアル当日に取り組むことを決めました。 検索の改善は継続的な取り組みが必要な息の長いタスクだと思いますが、その一端をトライアルという短い時間で表現したいというのもこの決定の理由の一つでした。

この記事では具体的な方法論には触れませんが、以下のドキュメントを参考にしました。

www.elastic.co www.elastic.co

余談ですが、トライアル前日にElasticsearchのローカル開発環境を動かそうとしたところサクッと動かせないことに気づき、非常にドキドキして当日にトライアルに向かいました。 結局動いたのは当日の昼過ぎ(!)でしたが、実際にメンバと交流しながら作業をして、最後にデモをして無事終了となりました。

トライアルを通じて事業に対する理解が一気に深まったことを感じました。 また、Howに至るまでのプロセスを評価していただき、かつそういったフィードバックを直接いただいたことでカルチャーフィットを相互に確認できている実感がありました。 シンプルに「トライアルっていいな...」と思いながら帰路についたことをよく覚えています。

今後に向けて

ここまでトライアルの長所ばかりをご紹介しましたが、組織が拡大するにつれて以下のような問題が顕在化してきました。

  • トライアルを行うための弊社側の環境整備(権限等)のコスト増加
  • 社内資産の拡大による候補者側のキャッチアップコストの増加

しかし、社内的にはトライアルという採用プロセスを大事にしていきたいというコンセンサスがあり、今後もよりよいトライアルを行えるように仕組みを整備していきます。

さいごに

この記事では、弊社のプロダクトの質を下支えするトライアルという選考プロセスについて私の実例を踏まえてご紹介しました。

弊社の社員はよく「強そう」「怖そう」と言われている印象があります(笑)が、トライアルで見られるのは「強さ」というよりかはいかに真剣にプロダクトに向き合えるかという点に尽きると思います。 私自身も働きながら、一番大切なのは熱意だな、と日々痛感しています。また、課題はチャレンジングでしたが、フィードバックが柔らかい社員ばかりだと入社してからも再認識しました。

怖くない10X!ということで、本記事を読んでいただきさらに10Xの話を聞いてみたい!と思った方は、定期的に開催しているオープンオフィスへのご参加お待ちしてます!😄 また、カジュアルに10Xのプロダクト開発について聞いてみたい方は本記事を書いた 村岡(@_tapih)のTwitter DMでもご連絡をお待ちしてます!

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