10Xが”検索”と”推薦”に心を燃やすワケ

はい、こんちゃーす(eyden)、Stailerのプロダクト責任者の矢本です。この記事はCEO/創業者という立場ではなく、一人のプロダクトに関わる人間として書いています。この記事の焦点はStailerのエンドユーザーでもある、お客様の”買い物体験”です。

早速ですがこの記事の結論をお伝えします。

  • スーパーでの買い物体験は多量の”意思決定”で構成されています
  • Stailerはお店の買い物体験を補完するプロダクトです
  • ネットスーパーの買い物体験を支えるのは”検索”と”推薦”という技術です

つまり、検索エンジニアや、推薦を支えるMLエンジニア、推薦のアルゴリズムを作る Data Scientist、MLをプロダクト価値に落とし込んでいくテクニカルプロダクトマネージャー、これらを多数の制約からプロダクトデザインへ落とし込むデザイナーも強く募集しています。ここまででピンと来た方は10XのMLエンジニア (兼 検索エンジニア) である @metalunk とのカジュアル面談や、下記の求人フォームをおすすめさせていただきます。 (※これは私からの”意思決定を支えるための推薦”です)

それでは本題に入っていきましょう。

スーパーでの買い物体験は多量の”意思決定”で構成されています

みなさんスーパーマーケットは好きでしょうか?私は大好きです。この仕事を通じてどんどん好きになっています。毎週2回のネットスーパーと、ほぼ毎日近所のスーパーで白身魚や鶏むね肉、青果類、子どもが飲み干した牛乳を買い足す、というくらい足繁く利用しています。

そんなスーパーにおいて、自身がどんなことを考え、商品を手にとっているか思い返してみて下さい。カゴの中の商品の数だけ「商品を手にとった理由」があるはずです。あるいは「一度手にとった商品を棚に戻した理由」も、「気になったけど手に取らなかった理由」も存在するはずです。しかし私達は普段そんなことを意識しながら買い物をしませんよね。

極めて多数の意思決定を、ほぼ無意識下で行うことができる。それがスーパーマーケットが創り出した買い物体験の妙ではないかと私は思っています。

そしてこの意思決定は大きく「商品を手に取る目的ごとの性質」と「商品への到達経路の性質」という2つの要素によって構成されていると私は考えています。はて、どういうことでしょうか。

商品を手に取る目的ごとの性質

スーパーでのお買い物は1回あたりのお買い上げ点数が数十点ほどに登ります。この時点でお買い物体験としてはめちゃくちゃ特殊です。

この数十点がどのようなもので構成されているか、をお客様の「買うときの目的」という視点から3つに分類したものが下記になります。

「買うときの目的」という視点から3つに分類

同じ牛乳でも、「冷蔵庫からなくなったから補充する」というバスケットスターターとして購入する場合もあれば、「グラタンを作るために買う」という指名買いで購入する場合も有り、一概に「牛乳だからバスケットスターター!」とはならないのもポイントです。お客様の視点、思考を洞察する必要があり、とても奥深ですね。

商品への到達経路の性質

各商品へのお客様の経路、というのも探索・回帰・発見の3つに分類できると考えています(回帰は厳密には探索の一部なのですがあえて切り出してます)。

経路の性質

この3つをお店での体験でストーリーにするとこんなかんじです。

  • 季節のとうもろこしがないかを野菜売り場で探し(探索)
  • いつも買っている「明示 おいしい牛乳」を日配棚へ直行してカゴに入れ(回帰)
  • 途中で積み上げられた新作のシリアルを朝食用に買う(発見)

お店では「棚」というものがこの3つの経路をすべてカバーしている発明なのだと思います。棚の配置や商品の配置は緻密なサイエンスで行動を喚起していることになります。

先程の”目的”と”経路”を組み合わせて、使われ方の比率をイメージにしてみました。

比率のイメージ

バスケットスターターは”特段強い目的買い”の性質があり、特に”回帰”の経路が使われる、と考えています。牛乳がなくなったから買い物に行こう、その牛乳は売り場のあそこにあるはずだ、とほぼ自動的にその商品の前まで足を運んでいる状態です。

ただ普段そこまでの頻度では購入しないものは”売り場を探す”とか”店員さんに聞く”という探索行動をとるはずです。例えばスパイスやトマト缶なんかは私はあまり高い頻度では買わないので、これらを買うときは売り場をウロウロとさまよってまず棚を探しています。

そうして売り場をさまよっていると、あ、これは子どもが食べそうだな、とかこの調味料気になるな、とか、鍋の特集が美味しそうで一式買っちゃう、みたいなこともよくあります。これが発見によるついで買いです。

こういった形で、”商品の目的”に対して”よく使われる経路”があるはずです。一つ一つの商品はこれらの意思決定の積層によって、カゴに詰め込まれていくのです。

Stailerはお店の買い物体験を補完し、ファンを増やすプロダクトです

ここまではお店での体験を事例に書いてきました。これらをネットスーパーの買い物体験として捉え直すと、お店の体験を置き換えるのではなく、補完する体験であることがわかります。

買い物体験を補完する

お店の強みはなんといっても”棚”であり、商品と直に触れ合える”リアルさ”です。匂い、見た目、触った感じ、沢山の人がお買い物をしている雰囲気、お店の従業員の挨拶など、こういった多様で直感的な情報が得られるのはお店の最大の強みです。

他方でネットスーパーの強みは情報の扱いやすさです。”トマト”と検索すればどこのページからでもトマトがカートに入れられます。パン売り場から野菜売り場まで戻る必要はありません。

そして”お店が考えた企画”では棚の種類に制限や偏りが発生しますが、ネットスーパーにはその制約はありません。個々の好みに合わせて商品が推薦されることだって可能です。計算機を使って、”多様な人に、手軽で、すばやく商品へのルートを提供できる”のはネットスーパーならではの強みになっていくはずです。

Stailerが目指すのは、パートナー企業やその先にいるお客様に対してお店の体験を補完する買い物体験を提供することです。

現に、Stailerを通じてネットスーパーを導入されたパートナー企業にとって、お店とネットスーパーは”併用されるもの”になっています。お客様は店舗とネットスーパーのそれぞれの体験の違いを踏まえながら、使い分けられており、その多様なお買い物体験こそがエンゲージメントを高める理由にもなっているのです(以下、10X Culture Deckより)。

10X Culture Deckより

ネットスーパーの買い物体験を支えるのは”検索”と”推薦”という技術です

Stailerではすでに毎日数十万点ものの商品が購入される規模になってきました。その数十万点の後ろには、先程挙げた複雑な意思決定が数十万回発生しているということです。今こそ技術による支援が必要な時だと考えています

ネットスーパーならではの体験を大きく支えるのが”検索からの探索”と”推薦からの発見”です。いずれも技術によって店舗では実現できない体験を提供し、店舗の体験を強く補完するものであり、Stailerはこの2つに大きな可能性を見出しています。

この1年ほどはよりエッセンシャルな検索にフォーカスを当てて取り組んできました。その様子は以下の2つの記事でご確認いただけます。といっても10Xの検索と推薦を専任で担うエンジニアはなんと @metalunk 1名です。いやー、まいったね。

product.10x.co.jp product.10x.co.jp

この記事の最後でStailerの推薦機能はこれからやっていくぞ、と触れられていました。

10X の検索を 10x したい パートⅡ より

受動的に商品を推薦される体験を提供したいです.はじめは小さくルールベースからですが,将来的には機械学習を利用した推薦を提供するはずです.これを読んでいる推薦のスペシャリストのあなた,私が MLOps エンジニアとしてあなたのモデルを動かす環境を準備してお待ちしております

まさに現在、推薦機能の立ち上げを行っています。ネットスーパーの推薦は非常に考えることが多いチャレンジングな機能だと感じます。

大量の商品情報で敷き詰められた小さなUIという制約の中に、発見性の高いプロダクトデザインを埋め込むか、お客様の”探索”や”回帰”を邪魔しない発見経路を生み出せるか、推薦のためのインプットはなにか、推薦の品質をどう評価するか、推薦のアルゴリズムをいかに改善するか…etc

こういった大量の論点の中から、はじめは推薦場所(候補がたくさんあります)の価値の探索や、推薦がもたらすインパクトの探索を優先し、シンプルなアルゴリズムによる推薦 (ε-greedy のバンディットアルゴリズム、というそうです)からスタートします。しかしこの機能のDesign Docにはすでに以下の文言が記されています。

Design Docより

ML を使うとなると,改善のサイクルが普通のアプリケーションとは異なり,MLOps と言われるものをやるべきである.

MLOps を意識せずに作ったものを移行するのは大変だし,最初から MLOps によって得られる恩恵はあるから,最初から MLOps 部分を作る.

ということで、Day1からML基盤の構築と一緒に新機能開発を進めているところです。すでに十分なインパクトが見込めるプロダクトに新しい価値をつくること、そして長期に渡る技術を用いた発展基盤を創ること。この2つが同時に走っているとても貴重なタイミングだと考えています。

ここまでご紹介の通り、Stailerにおいては推薦はまだまだ白地のキャンパスです。この価値を一緒につくっていきませんか?

PS. 私と推薦

実は私が駆け出しのプロダクトマネージャーとして初めてゼロからつくった機能がとあるECの商品ページで協調フィルタリングを用いた合わせ買い(クロスセル)推薦の機能でした(その相方は一人目エンジニアの @wapa5pow でした)。

そこから時は経ち、ネットスーパーという、最も合わせ買い頻度の高いECにおいてこういったチャレンジができていることがとても嬉しいです。@metalunk から薦められた以下の本を読んで、推薦技術について復習したりしています。

www.oreilly.co.jp