こんにちは、10Xでプロダクトマネージャーをしている@ysk_urです。社内のみんなの頭の中ではだいたい同じものを見ていたと思うのですが、改めてプロダクトビジョンとプロダクト指針を作成した話を今回は書こうと思います。
個人的には、「直接の顧客はtoBだけどtoCの生活をより便利に」、「ネットスーパーの歴史的経緯からの制約の設定」、「継続的なアップデートが必要」などのポイントが気に入ってます。
プロダクトビジョンとプロダクト指針作成の背景
会社の活動サイクルが全社戦略によりフォーカスして活動を行う形に変化したことに合わせて、戦略と紐づけた形で「プロダクトの目指すべき姿」を明確に定義する必要があると感じました。
また、過去の取り組みを振り返ると今回改めて書いたプロダクトビジョン達成のための活動自体は行われていましたが、中長期で十分に達成できるかという視点が弱いという課題もありました。
プロダクトビジョンを明確にすることで、社員がプロダクトの方向性を理解し、集中して取り組める環境を作りたいという狙いです。ロードマップが単なる施策リストになってしまわないように、また、社員がビジョンに基づいて自主的に動き出せるよう、以下のようなポイントを意識しました。
- 方向性の明示:「どこを目指しているのか」を明らかにすることで、社員が戦略を理解し、やらされ感を持たないようにしたい。
- 予見できる機会への準備:市場の機会が到来した際に迅速に対応できるよう、ビジョンを基盤に考えを整理し、準備を整える。
- ユニークな存在意義の提示:単なる事業利益や時価総額の達成ではなく、「なぜ私たちが小売業界に向き合い、ネットスーパー/ネットドラッグストアを支援するのか」という意義を共有し、社員のモチベーションを高めたい。
こうした背景から、社内で既にあった考えやドキュメントをベースに、CTOとプロダクト本部付のメンバーで議論を重ね、具体的なビジョンを作成していきました。
プロダクトビジョン・プロダクト指針の作成プロセス
プロダクトビジョンの作成は、社内で既にあった考えやドキュメントをベースにスタートしました。
議論の中では、顧客は誰なのか?最終的に実現したい世の中はどういったものなのか?などで議論が白熱しました。また、ネットスーパーの歴史的経緯や市場環境から、プラットフォームとして取り組むことの意義などが議論され、結果として制約が改めて言語化されていきました。
プロダクトビジョン策定における議論の広がりや複雑さを振り返ると、BtoBtoCビジネスの難しさを表していると思います。直接の顧客は小売企業ではあるが、実現したいことは人々の日常の買い物を便利にすることであり、間接的に実現したいことを達成する必要があります。10Xのコーポレートサイトにでかでかと載っている「1人の難題を巨大な市場から解く。」をまさに取り組んでいるなと改めて実感しました。
また、プロダクトビジョンを達成するためには、Stailerが多くのパートナーを迎え入れてもソフトウェアが健全な状態を維持し、開発速度を落としたり、必要以上の保守運用コストをかけてはいけないことも改めて見えてきました。 そういった経緯から、プロダクトビジョンだけでなく、プロダクト指針も作成することになりました。
複数回の議論を踏まえ、最終的に以下のプロダクトビジョンとプロダクト指針を策定しました。最終的にプロダクトビジョンとプロダクト指針という構造に整理されていますが、ここも紆余曲折がありこの形に着地してます。構造から入るとうまくいかなかったと思うので必要な要素を構造化した形になります。
実際に作成したプロダクトビジョンとプロダクト方針の一部
一部抜粋して記載しています。詳細や全体像を知りたい方はぜひお声がけください。
プロダクトビジョン
「小売企業がネットスーパーやドラッグストア事業を持続的に運営できる手段を提供し、人々の日常の買い物を便利にする。」
プロダクト指針
プロダクトビジョンを実現するために、以下のプロダクト指針を定義しました。中長期でStailerの価値を高めていくための制約になります。実装方法以外にも提供価値も定義していますが、ここでは実装方法の制約の一部を紹介します。
プロダクトが提供する価値
お客様
- オンラインならではの利便性: 店舗への移動や運搬からの解放、検索や推薦による効率的な購買など、オンライン前提ならではの利便性を強化する。
小売企業
- 正確で効率的な業務遂行: オペレーションのミスや非効率が生じにくい業務支援ツールを提供し、NS/NDgSの運営にかかるコストを抑制する。
実装方法の制約
プロダクトの機能
- 全企業共通の仕様: 機能の仕様は汎用的に設計し、すべての小売企業のNS/NDgSで共通の実装をする。
- カスタマイズは小売企業側で完結: サービスの設定、特定の機能の有効化といったカスタマイズは、管理画面を通じて小売企業側で完結して行えるようにする。
システム連携
- 事業運営に必要なシステム連携の完備 : 小売企業のシステムが必要とする連携のインターフェースを揃えており、小売企業がシステムを適合させ次第、事業を開始できる。
- 企業個別の実装の分離: ビジネス上の都合によって企業個別の実装を作らざるを得ない場合、プラットフォームの実装には混ぜ込まずに分離する。
プロダクトビジョンの社内反応と今後の課題
プロダクトビジョン策定後、社内で共有を行った結果として戦略として掲げて進めている施策が複数あります。 特に実装方法の制約に関してはPMFフェーズを超えてスケールを目指す上では重要な取り組みとなっており、現在の実装を見直し改善に向けた取り組みが実際に進んでいます。 Stailerはプロダクトの機能が非常に多いのですが、カスタマイズや設定等が必要な機能を適宜小売企業側で完結できる形に実装が進んでます。
実現方法を変えることでのメリットとデメリットはプロダクト本部のメンバーだけでなくビジネス本部のメンバーにも十分に理解してもらい、中長期でプロダクトビジョン達成に一定の目線があってる状態を作ることができています。
一方でまだまだ社員全体への浸透は十分とはいえない状況だと思っています。ベースとなるものがあったのもあり、作成プロセスに多くのメンバーを巻き込んだわけではなかったり、言語として洗練されていないことで浸透が弱いと思っています。より浸透を図るための取り組みが今後の課題と感じています。
また、1年前に同じ状態のアウトプットが作れたと言うと高い確率で違うものになったと思います。事業を進める中で得られる知見の反映も必要なので、今後も継続的なアップデートを前提としています。