チーム境界をメンテナンスし続ける営み

この記事は10X 新春ブログリレー 2026の1月22日分の記事です。


ドメインベースの開発体制から3年

10Xの開発チームがドメインベースの開発体制へ移行してから、約3年が経過しました。

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改めて当時と比較してみると、認知負荷の増大やオーナーシップの欠如といった課題は大きく改善したと感じています。もちろん新たな課題や難しさもありますが、ドメインベースへの移行自体は、総じて進めてよかったなと言い切れる試みでした。

この記事では、そんなドメインベースの体制の「チームの境界」という点にフォーカスして体制移行時にどのように初期的な境界を決めたのか、そしてこの3年間でその境界をどう見直してきたのかについてお話をしてみようと思います。

初期的な境界の決め方

初期のチーム境界と担当ドメインは、以下のような手順で定義しました(実際には1〜4がスムーズに進んだというよりは、何度か行き来しながら議論を繰り返して初期的な形に着地しました)。

  1. 当時のアプリケーションが担っていた業務をリストアップする。
  2. それぞれの業務がどんなコンテキストに紐づいているかを整理する。
  3. コンテキスト間の関係性や依存をまとめる。
  4. これをもとにチームの境界を決める。

コンテキスト間の関係性を整理するワークで使った図の一部

境界をメンテナンスする

こうして決まった初期の境界も、当然ながら永続的な正解ではありませんでした。事業を進める中で、課題に応じてドメインを移管したり、チームを統廃合したりといった見直しを幾度となく行っています。

当初は課題が顕在化するたびに都度判断していましたが、最近では四半期に一度、エンジニアリングマネージャーがオフラインで集まり、集中的にワークやディスカッションを行う時間を設けています。

その議論では、下記のように業務を分類して工程ごとに区切った上で「どこをチーム間の境界とすべきか」を深掘りしています。

業務の工程を整理しどこに境界を敷くか議論する

議論では、事業の状況を踏まえて「2年先にはこういう境界になっているのが理想ではないか」という未来像を認識合わせした上で「じゃあ今、どのような変化を起こすべきか」についてディスカッションしています。

境界を変更した例

実際のところ「どんな変化をどんな理由で適用したのか」というのも気になると思うので、この3年間に実際に大きくチームの形を変えた事例をいくつか紹介してみます。

お買い物チームの再編

初期に存在した「お買い物チーム」は、現在「店舗チーム」と「売場チーム」の2つに分割されています。 ネットスーパー事業では「スタッフ」と「お客様」という2つの大きなアクターがいますが、「お買い物」という名称はやや後者(お客様)にウェイトが寄っていました。

名前や責務と実態の間に歪みが生じていたことから、「お買い物チーム」を「売場」へとリネームしました。さらに、そこから注文枠管理や配達エリア管理など、直接的に売場に関わらない複雑な業務を切り出し、「店舗チーム」として再定義する意思決定をしました。

マスタデータチームと売場チームの統合

マスタデータチームは現在、売場チームと統合されています。

商品データの入稿と売場のあり方は密接に結びついており、課題の本質的な解決のためには双方のドメイン知識が必要である、というケースが多くあったことが背景にあります。チームが分かれていることで生じていたコミュニケーションコストや局所最適化を解消するため、一つのチームとして動く形を選択しました。

お届けチームとお会計チームの統合

両者のコンポーネントは保守性の向上にこの2年間大きくリソースを割いたこともあり、2023年当時と比較すると認知負荷や運用負荷がコントローラブルな水準となっていました。また、前述したような図を記載しながら業務フローを整理する中で、この2つは非常に近しいドメインであることも見えてきました。

このような背景に加え、今後の新規事業の成長を見据えるとネットスーパー事業をより筋肉質な体制で運営したい、という意志も込めチームを統合する判断をしました。

ベストな境界は動き続ける

ここに記載したもの以外でも、細かなドメイン移管や境界の調整は日常的に行っています。こうして振り返ってみると、やはり初手でベストな切り方をすることは難しいですし、そもそも事業やソフトウェアの進化とともにベストな構造自体が変わり続けるものだと改めて実感します。

最近、開発言語の面ではRustの検証を進めているように、利用する技術も、アーキテクチャも、そしてチームの境界も、事業の進化に合わせてその時々のベストは移ろい続けるのだろうなと思います。

泥臭くメンテナンスしていく

また、こうした境界に関する議論や調整をしてきて、一点の曇りもないベストな体制というのを作るのは現実的には困難だ、ということも感じました。正直に言って、理想とはいえないアサインをせざるを得ない局面も多々あります。

だからこそ「こうあるべきだ」という理想を見据えながらもなんとか現実の実務を回しつつ少しずつ理想に近づけていく、あるいは正解が見えない中でも業務を回す中で理想の輪郭を掴んでいく。そうしたある種の泥臭さを持って、事業のためにその時々で一番ベターな良い境界を探索していくことが重要なのだろう、と思っています。

仲間募集

10Xは理想を見据えつつも、泥臭くドメインやその境界に向き合いたいぞ、という仲間を募集しています。少しでも興味持ってくれた方は、ぜひ一度お話しましょう! 10x.co.jp